前回はふわっと鍼灸について説明しました。今回は、どんな症状に悩んだら鍼灸に行ってもいいのかについて説明します。
よく初対面の方に職業を聞かれて『鍼灸師です。あっ・・・(伝わってないな?)はり灸師です』と言い直す場面があります。急に馴染みのない言葉を聞いて会話が止まってしまうのです。笑
その後の会話の続きは『肩こりが酷いんだよね』『腰が痛くて、どうすればいい?』のような内容が多いです。筋肉や関節の痛みで鍼灸へ行くイメージはあるようですね。
そんなわけで、今回は鍼灸はどんな症状に対応できるのかを書いていきます。
適応症をまとめてくれたWHO
みなさんも1度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?
WHO(だぶりゅー・えいち・おー)とは
WHOの概要
世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として設立された国連の専門機関です。1948年4月7日の設立以来全世界の人々の健康を守るため、広範な活動を行っています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(日本WHO協会訳)
WHOの鍼の適応疾患
1.上気道疾患 ①急性副鼻腔炎 ②急性鼻炎 ③感冒 ④急性扁桃炎 2.呼吸器疾患 ①急性気管支炎 ②気管支炎(小児が最も有効、合併症がないもの) 3.眼疾患 ①急性結膜炎 ②中心性網膜炎 ③近視(小児)④白内障(合併症がないもの) 4.口腔疾患 ①歯痛 ②抜歯後疼痛 ③歯肉炎 ④急性・慢性咽頭炎 5.胃腸疾患 ①食道、噴門痙攣 ②しゃっくり ③胃下垂 ④急性・慢性胃炎 ⑤胃酸過多症 ⑥慢性十二指腸潰瘍(除痛) ⑦急性十二指腸潰瘍(合併症がないもの) ⑧急性・慢性腸炎 ⑨急性細菌性赤痢 ⑩便秘 ⑪下痢 ⑫麻痺性イレウス 6.神経、筋、骨疾患 ①頭痛 ②片頭痛 ③三叉神経痛 ④顔面神経麻痺(初期、3~6カ月以内のもの) ⑤脳卒中後の不全麻痺 ⑥末梢神経障害 ⑦急性灰白髄炎の後遺症(初期、6カ月以内のもの) ⑧メニエール病 ⑨神経因性膀胱 ⑩夜尿症 ⑪肋間神経痛 ⑫頚腕症候群 ⑬五十肩 ⑭テニス肘 ⑮坐骨神経痛 ⑯腰痛 ⑰変形性関節症 《出典:社団法人 東洋療法学校協会 はりきゅう理論より》
鍼灸の有効性
WHO以外にも鍼が有効だと発表してくれているところがあります。
米国国立衛生研究所(NIH)です。
1998年に
- 成人の術後の吐き気や嘔吐
- 薬物療法時の吐き気や嘔吐
- 妊娠時の悪阻
- 歯科の術後痛
これらにも効果があると声明書を出しています。面白いことに、こちらは吐き気ばっかりですね。
その他にも各鍼灸師会のホームページを見てみると・・・(流し読みor飛ばしても構いません)
循環器系 本態性高血圧症、本態性低血圧症、神経性狭心症、不整脈の一部、動悸、息切れ、心臓神経症など 呼吸器系 気管支喘息、過呼吸症候群、神経性咳嗽、風邪による諸症状の緩和など 消化器系 消化性胃潰瘍、潰瘍性大腸炎、過敏性大腸症候群、下痢便秘症、神経性嘔吐症、腹部膨満症、呑気症、神経性食思不振症、痔疾など 内分泌代謝系 肥満症、糖尿病、心因性大飲症、甲状腺機能亢進症、脚気、痛風、貧血など 神経系 頭痛、筋緊張性頭痛、自律神経失調症、神経痛、神経麻痺、脳卒中後遺症、不眠など 生殖・頻尿器系 腎炎、夜尿症、過敏性膀胱、インポテンツなど 運動器系 慢性関節リウマチ、頚腕症候群、五十肩、腰痛症、膝関節痛、全身性筋肉痛、外傷性神経症、書痙、痙性斜頚、チック、脊椎過敏症など 皮膚系 神経性皮膚炎、皮膚掻痒症、湿疹、円形脱毛症、多汗症、慢性蕁麻疹など 耳鼻咽喉科系 メニエール症候群、咽喉頭部異物感症、難聴、耳鳴り、乗り物酔い、嗄声、失声、吃音など 眼科系 原発性緑内障、老人性白内障、眼精疲労(疲れ目・ドライアイ等)、眼瞼痙攣など 婦人科系 不感症、月経痛、無月経、不妊症、更年期障害など 小児科系 小児疳の虫、夜尿症、夜驚症、腺病質、アレルギー、小児消化不良症など その他 臀部・腰部・手足の冷え、肩凝り、のぼせ、不眠等の不定愁訴など 《公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会 各種症状についてより引用》
もう、読むの嫌になるほどありますよね。読まなくても大丈夫です。でも、それだけ鍼灸には出来ることがたくさんあります。
そして、一般的にはあまり知られていませんが、2018年には鍼灸・漢方がWHOによって医学認定されると、私たちの業界では話題になっていました。 → 漢方薬や鍼灸など「伝統医療」WHOが認定へ 日本の漢方、地位向上へ
医学認定されることによって、もう少しいろんな方に認知していただきたいです。
【まとめ】結局どんな人が行けばいいの?
一言で言えば【体質を改善することで良くなる人】に向いています。
上記のたくさんの症状も、筋肉や骨などの『運動器系』(体の動きに関わる部位)よりも、内臓や感覚器(目、耳、鼻、皮ふ)などの症状の方が圧倒的に多いことにお気づきでしょうか?
鍼灸では、病名よりもお体に出ている(感じている)症状を重視します。
一口に頭痛と言っても体質が違えば、使うツボは変わります。体質を改善することで、症状がでない体づくりをするのです。
現在通院中で、お薬を服用中の方でも並行して施術をすることは可能です。(その場合は担当の医師に確認を取ってください)
慢性的な症状であれば鍼灸を取り入れることを一度考えてみていただきたいです。
どちらが早く良くなるかを考える
鍼灸で対応できる症状はたくさんありますが、すぐに結果が出るわけではありません。特に長期に渡り感じている症状は、定期的な施術を何カ月も続けてやっと結果が出ます。
最近では白内障は日帰り手術で対応できるようになっているので、鍼灸よりは眼科へ行かれたほうが早く良くなります。抗生剤が効くような感染症であれば、抗生剤を飲むことで早く症状が落ち着くでしょう。
明らかに関節を捻って腫れているものは、一度レントゲンで骨折の有無を確認して固定したほうがスムーズに治ると思います。
早く日常生活に戻れる方法が1番だと考えています。