
東洋はり灸院 統括院長の石丸です。今回は「後悔しない鍼灸院の選び方」と題してお話ししたいと思います。
過去にも何度かお話しさせていただいた内容ですが、追加の事項がありますので、改めてお伝えしたいと思います。
動画解説「長引く慢性乾癬について」
鍼灸業界への危惧

私は鍼灸を専門に行い、この業界に20年以上携わっていましたが、近年、鍼灸業界が徐々におかしな方向に向かっているように感じ、危惧しています。そのおかしな方向とは、お金儲け主義の鍼灸院が増えていることです。
鍼灸院は、大きく分けて2つのタイプに分類できます。1つはお金儲け主義の鍼灸院、もう1つは魂を込めて患者さまの改善を心から願う鍼灸院です。
皆さんが行きたいと思うのは、お金儲け主義の鍼灸院でしょうか?それとも、鍼灸師魂を持った鍼灸院でしょうか?やはりお金儲け主義の鍼灸院は、利益を追求するためのテクニックや考え方が先行しています。事前にその特徴を知ることで、鍼灸院選びの判断材料にしていただければ幸いです。
もし、治療家魂を持った鍼灸院に行きたいとお考えの方は、これからお伝えする5つのポイントを、ぜひ参考にしてください。
①回数券

まず1つ目は、回数券を販売していることです。最初に断っておきますが、お客様のために回数券を販売しているのであれば、何の問題もありません。現在、当店では回数券の販売は行っていませんが、将来的には販売する可能性もあります。
例えば、改善のためには絶対に10回の施術が必要な方がいらっしゃったとします。この場合、お客様の負担を少しでも軽減するために回数券を購入していただくことは、決して悪いことではありません。
しかし、回数券には注意すべきタイプも存在します。それは、「即日決定で割引を適用する」するというものです。初回時に回数券の存在を教えられ、「もし、今日この場で回数券を買っていただければ、〇〇円です。」「ただし、次回以降は〇〇円になります。」などと説明された場合は、注意が必要です。
このようなケースは非常に多いのですが、よく考えるとおかしな話です。このような提案をするところはセールスマン魂を持つ鍼灸院でしょう。「今日、買わなければ高くなりますよ。」と促して、回数券を買わせようとするやり方は囲い込みをしようとしているだけです。
はじめにお話ししたとおり、回数券が悪いわけではありません。ただし、いつでも同じ値段で購入できる回数券でなければおかしいと私は思います。回数券は、お客様が「この鍼灸院に通いたい」と思ったタイミングで購入するものです。
無料で宿泊できる?
皆さんは、このようなフレーズをどこかで聞いたことがないでしょうか?
ハワイのタイムシェアは、ホテルなどのリゾート施設を1週間単位で所有できる権利を購入する仕組みです。実は私も以前、「3日間、無料で宿泊できる」との触れ込みに、「これはセールスかな?」と思いつつも、詳しい話を聞きに行ったところ、「この場で決めていただければ、〇〇円にします。」と言われたのです。
即日購入で割引を行うという手法はこれと同様で、ある種のテクニックなのでしょう。このようなことを提案する鍼灸院は明らかにセールスマンですので、十分に注意していただきたいと思います。
②通い放題

2つ目は、通い放題をうたっていることです。「1か月通い放題」や「月に〇〇円+都度払い」と設定している鍼灸院には注意が必要です。鍼灸とは少々異なりますが、このような料金プランを採用している整骨院は、とくにひどいと思います。
なぜかというと、例えば、月に6,000円~9,000円を支払い、通う度に800円ほどが請求される整骨院があったとします。この場合、さらに保険も請求されていることを考えると、決して安いとは言えないからです。
通い放題を設定する本来の意図は、少しでもお客様からお金を取ろうとする思いや、囲い込みです。施術は、食べ放題・飲み放題とはまったく性質の異なるものであり、「通い放題」などはもってのほかだと思います。
ただし、完全なる慰安行為の場合は、通い放題でも問題ないでしょう。そもそも整骨院ではリラクゼーション目的のマッサージは行われませんが、慰安行為として通う方には利点もあるかもしれません。
例えば、「都度払いは800円ですが、会員制で月に6,000円を支払うと、毎回10分のマッサージを追加します」などと表記しているケースが多くみられます。そのため、慰安目的で通う場合には良いかもしれませんが、症状の改善を目的として通うのであれば、オススメしません。
本当に真剣に施術しているところは「通い放題」をうたうはずがないので、改善は期待できないと思います。食べ放題・飲み放題のお店と、一品一品に力を入れている専門店では質が異なるように、通い放題をうたう鍼灸院は質が低いと言わざるを得ません。
本当にお困りの症状がある場合は、通い放題の鍼灸院は避けた方が良いでしょう。
③高単価

3つ目は、高単価な鍼灸院です。例えば、施術料金が5,000円の場合、お客様は「5,000円の施術を受けた」と思います。同様に、7,000円や1万円の場合も、それぞれの金額に見合った施術内容だと感じるでしょう。しかし、5万円の施術が本当に5万円の内容なのかというと、必ずしもその料金に見合った内容や質が保証されているわけではありません。
以前もお話ししましたが、看板も掲げていないような場所で、この道40年以上の大ベテランの鍼灸師が未だに4,000円で施術を行っているケースもあります。鍼灸師歴数年の鍼灸院が高単価な設定にしている一方で、こういった鍼灸師もいらっしゃるわけです。
つまり、施術の内容と価格は必ずしも比例しません。この点には注意が必要であり、「高い方が良い」と思うことは絶対に間違いです。高単価だからといって、必ずしもクオリティが高いわけではありません。
では、高単価がどの程度の金額を指すのかについては難しいところですが、20年以上鍼灸業界に身を置く私の感覚としては、1万円を超えると高いと感じます。
もし5回の施術で確実に改善できるのであれば、5万円でも支払うかもしれません。しかし施術者であっても、何回の施術で改善するかは正確にはわからないはずです。「5回の施術で絶対に改善します」とは断言できないのです。
私はよく「絶対に改善します」とお伝えしますが、それは何回で改善するという意味ではなく、絶対に改善することがわかるという意味です。私自身も、何回目でどうなるかは正確にはわかりませんが、これまでの経験から、納得するところまで改善できるだろうことはわかるのです。
価格設定については地域性などもあるため、一概には言えませんが、高い方が良い鍼灸院だと思うことは絶対にやめた方が良いと思います。ホームページの改善実績などを参考に、お金儲け主義の鍼灸院かどうかをお客様自身が心の目で見極める必要があります。
④サブスクリプション

4つ目は、サブスクリプションです。サブスクリプションには賛否両論ありますが、回数券と同様に、お客様のためを思って導入されているのであれば良いと思います。例えば、今後も月に1~2回通われる予定であれば、サブスクリプションの方が安くなるため、推奨できる場合もあります。
しかし囲い込み目的で導入しているケースも多いため、サブスクリプションはすぐに契約せずに、本当に気に入った場合に限定するといいでしょう。
⑤物販が強め

5つ目は、物販が強めなことです。物販についても、これまでのお話と同様にお客様のためであれば問題ありません。しかし、そうでなければお金儲け主義だと言えるでしょう。
当店の従業員も、以前働いていた職場で厳しい販売ノルマを課せられていたと話していました。これは決してお客様のためでなく、鍼灸院の売上やオーナーの利益のためだけに販売を強いられていたのです。
従業員とお客様が利用されている可能性が高いため、物販に力を入れている鍼灸院には注意してください。とくに、その物販の価格が高い場合は、さらに警戒した方が良いでしょう。
より良い鍼灸院と出会うために!

ここまで、いろいろとお話ししてきましたが、鍼灸院の中にはお金儲け主義の鍼灸院と治療家魂を持った鍼灸院があります。
私の印象では、お金儲け主義の鍼灸院が8割を占めているため、2割の鍼灸師魂を持った鍼灸院を見つけることは逆に難しいかもしれません。しかし、私がお伝えした4つのポイントを参考にしつつ、ご自身の社会経験もふまえて、ぜひ判断してみてください。
人は、困っているときほど思考が停止しやすい傾向にあります。ですので、あらかじめ後悔しない鍼灸院の選び方を知っていただき、より良い鍼灸院と出会っていただきたいと思います。

